(20230715:UM790 PRO(minisforum)を使ってて少し気になった点(Office、およびSSD増設)を書きました。)
今回の内容は、一言で言ってしまえば表題の内容ですべて終わってしまうのだけど、一応3年間追い求めていた環境と、それを実現するために用意した機材を紹介する。
コンセプトを踏まえて具体的に求める環境を言えば、
USB‐Cのコードのみを使ってノートPC代わりとなるミニPC環境を整える
ということになる。
この環境を実現するために、実はいろいろと細かいところで調べるべきところがあったので、この環境を整えたいと思う人に向けて、私の動機や欲しかった機能も含めて書いていく所存だ。
しかしその結果、少し長くなりそうなクッソ長くなったので、この記事の目次を以下に示しておく。
ノートPC環境との比較だけ見たい人は、以下の目次から「メリットとデメリット」「使ってみて新たに分かったこと」辺りに飛んでください。
その他、この環境を揃えるために用意した各機材について知りたい場合も、知りたい内容の項目が書かれている節に適宜飛んでくださいませ。
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実現したミニPC環境
とりあえず、まずは実現した現環境の画像(2023年8月。同年12月では構成が変わっている)。
以下は、これを実現するために用意した諸々の機材です(リンクはすべてアマゾンで統一していますが、最安値はアマゾンでない場合が多いです。私は半分ぐらいAmazonで買って、他は別の場所で買っています)。
[ PC ]
[ モバイルモニター ]
[ モバイルバッテリー ]
[ キーボード ]
[ 充電用USB-Cケーブル ]
UGREEN USB Type CケーブルPD対応100W/5A
[ PC-モニター接続用USB-Cケーブル ]
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前日譚
そもそもなぜミニPC環境を実現しようとしたかというと、ノートパソコン自体が非常に脆い商品である、という点が割と悩ましかったから。
いま、購入からちょうど二年経つノートパソコンを普段使いしているのだが、特に荒い使い方をしているわけでもないのに、特にモニター周りと電源周りがヘタっているのが日常利用の中でも非常に気になってくるようになった。
今回ミニPCに移行した直接的な理由は、ノートPCの不具合を保証期間内に直してもらうために少し長い間修理出すことになり、しばらく別環境が必要になったから。
ただ、時期的にドンピシャのタイミングでUM790 PROが発表・予約開始されたということもあったので、もしかしたらノートPCを修理に出すという感じにならなかったとしても購入していたかもしれない。
それぐらい、私にとっては待望の製品だった。
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ミニPC購入前の検討事項
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モバイルバッテリーについて
ミニPCには当然ながら、モニターもキーボードもタッチパッドも搭載されていないので、モニター、キーボード、マウスを見繕うことになるが、それに加えて、一番大きな問題が電源の確保。上記のように専用の電源アダプタを持っていれば、コンセントのある場所であれば問題がないが、ノートPCの代用として使用したいというからには、モバイルバッテリーで動かなければならない。*1
しかしこれが非常に難しい。まず、どのようなCPUを搭載していたとしても、最低ラインとしてPDに対応している必要があり、かつ、ノートPCに匹敵する電源容量を確保できなければならない。おまけに、モニターにも電源供給をすることを考えなければならない(ただその点は、UM790 PROにはAlt DP対応のUSB4ポートが二口用意されていたので解決)。
自分がミニPCでの使用を見越して最初に購入したのが、単ポート最大140W入出力(5A28V)、容量24000mAhのAnker 737 Power Bank。
また、わけあって後日、SHARGE STORM2 Power Bank(https://amzn.asia/d/54VGEws)も購入した。こちらは単ポート最大100W(5A20V)で、最大25600mAh。
どちらも3-4時間ほどの運用であれば電力が足りなくなることなく動く。ただ、Anker 737の方は残り電力が15%を切ると自動で供給電力に制限がかかり電源が付かなくなるので運用に注意が必要となる。
その制限が面倒だったので、しばらくはSHARGE STORM2の方を使っていたが、現在はさらに容量が大きな、Euker製のEuker Power Bank4を使用している。こちらは単ポート最大100W(5A20V)で、最大40000mAh。
少々重くはなるが最大で5-6時間はもつので、完全にノートPCと同じような感覚で電源のない環境でも使用できる状況になった。
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モバイルモニターについて
私がモバイルモニターに求めていた機能は、
- 16インチ程度の大きさ
- タッチパネル方式
- (できれば)バッテリー内蔵
- (できれば)軽さ
の4つ。解像度はこの大きさであればFHDでも十分きれいなので、WQHDや4Kは特に求めなかった。
上記の要求すべてを満たすために結局買ったのはRICOHのLight Monitor 150BW(https://amzn.asia/d/5UbgO3B)。
(正面は映してもしょうがないので背面のみ。少し見にくいが、「1」「2」と記されているところがUSB-Cポートです。)
購入の決め手は、要求をすべて満たす以外にもスタイラスペンでの書き込み機能が備わっているという点。もっとも、スタイラスペンは別途購入しなければならないが。。
このモニターは上記の機能以外にも、
- 有機EL
- ワイヤレスディスプレイでの映像出力対応
となっていて、およそモバイルでやろうと考えたい機能はすべて備えていると言っていい。
お値段は高機能である分それ相応に高い(というか今私がデスクトップで使用しているどのモニターよりも高い)が、例えばスタンドがスムーズに調整できかつ堅牢だったり、色彩の表示が豊かだったり、軽いのにそれ相応に長年活躍してくれそうな丈夫さを備えていたりと、買って損のなさそうな製品となっていた点で非常に満足度が高かった。
ただし、タッチパネル形式に多いグレアな画面なので、映り込みが気になる人は気になるかもしれないので注意。私は専用のアンチグレアシートを購入して貼付している。
また、ワイヤレスディスプレイについては、おそらくドライバーがまだ未熟なせいで接続に若干の不安が残る感じ。
しかしそれ以外には不満はない。ノートPCの代わりということでこれから持ち出す機会が増えるだろうが、しばらくは不満なく利用できると思う。*2
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キーボード・マウスについて
マウスについては特筆することはない。あえて言えばBluetoothよりはドングルのあるもののほうが安定すると思う。
キーボードについてもデスクトップと考えることはそう変わらないが、持ち運びという用途からして、最低限テンキーレスのほうがいいと思う。
現在の私のキーボードは、ロジクールのKX700PG MX KEYS mini。重さがそれほどなく、かつ私の掌の大きさに合っていたのでこちらを選択した。
USB-Cでの給電で手が大きな人でもタイプに支障がない程度には広いが、テンキーレスであるために持ち運びにはちょうど良い大きさとなっている。
以前は外で使う際の静音性を重視して、FILCO MINILA-R Convertible MX SILENT(https://amzn.asia/d/50sXqVM)を使用していた。
こちらはテンキーレスだけではなく、さらに矢印キーなどが省略されている、いわゆる60%キーボードと呼ばれるやつだが、カーソル移動のための矢印がないのが地味に面倒なので、正直少し大きくてもいいから矢印キーのあるものを買えばよかったと思うところもある。
まあただ静音性はかなり高く、HHKBレベルを求めるとかでない限りはこれで十分なレベルで、職場などひとところに置きっぱなしにして使う分には申し分ない。キーの打ち心地に関してはあまり詳しくはないので個人的に言えば、ブレなどもないので悪くはないと思う。
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ケーブルについて
モバイルモニターとUM790との接続用に1本、UM790と充電器との接続用に1本、それぞれUSB-Cケーブルが必要だが、それぞれ少しずつ求められる機能が違う。
前者であれば最低5Gbps転送が可能なもの、後者であれば少なくとも100W給電できるPD対応のものが必要となる。
しかし現状、だいたい10Gbps以上の転送が可能なものについては、多くの場合65~100W給電が可能なケーブルとなっている(さらに映像出力が可能)ので、(もちろん商品紹介のページをよく読む必要があるが)よほどのことがない限り転送速度を見ておけばたいてい事足りるはず。
私の場合は充電用のケーブルはUGREEN USB Type CケーブルPD対応240W(https://amzn.asia/d/1C55KVx)で、モニター接続用のケーブルはNIMASO USB-C ケーブル USB4(https://amzn.asia/d/491fU49)としているが、少なくとも後者については100W給電にも対応している。逆に前者は給電専用なので、データ転送自体はできるがかなり遅めになっている。
で、なんで二つに分けたのかというと、ケーブルの長さが長くなるほどUSB4対応のケーブルの値段が高いから。給電用のケーブルに求められるのは、給電能力以外には物理的な長さがあり、少なくとも2Mぐらいは欲しい。欲を言えばもう少し欲しいくらいだ。もちろん予算の上限がないのであれば、Thunderbolt4の長めのものを買っておけば汎用性としてもベストだが、基本的には長さの確保優先で考える方がよい。
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UM790 PRO本体について
(側面や上下面については公式より確認ください。メッシュになっていて通気性はかなりよいです。)
さて、満を持してUM790 PROの本体についてだが、まず拡張性については、上掲の写真の通り。USB-Aはすべて5Gbps。
HDMIが2発ついているので、USB4のポートを全部映像出力に使うのであれば、最大で4枚のディスプレイにつなぐことができるが、グラフィックドライバーの側で対応しているかは試していないのでわからない。
大きさはほぼほぼ130mm四方(奥行きが数mmだけ短い)。
また、繰り返しになるが、PC側でPD充電+DP Alt機能を持つUSB-Cポートを二口備えている。
これ以前にもUM560とUM580が、映像出力+PD充電の可能なUSB-Cポートを二口備えていた。こちらはSoCとしてZEN3世代のCPU(560は5625Uの6コア12スレッド、580は5800Hの8コア16スレッド)を積んでいる。UM790 PROはZEN4世代の8コア16スレッドCPU(7940HS)で、UM560、UM580が世代が一つ前のものなので、当然性能も劣っている。
ただ、ミニPCに通常求められるような基本的な挙動だけを考えれば、UM560やUM580でも十二分に働いてくれる性能になっている。加えて、UM790よりもかなり手ごろなお値段で購入できるので、今回紹介する環境に気軽にエントリーするにはもってこいだし、仮にこの環境が合わなかったとしても他用途への転用にも十分耐える性能を持っているので、こちらも買って後悔しないと思う。
内臓GPUについては、7940HSでは5625Uや5800Hから比べて3世代分上がっていて(Vega7→RDNA3)、3Dゲームですら画質調整すれば普通に動く程度の強さだということなので(GTX1650程度とのこと)、何かよほど無理をかけない限りは全くグラフィック性能で不満がでることはないはず。
編集作業なども複雑な効果などを使用しない限りは普通にできると思われる。
実際の筐体を手にしてみると、思った以上に軽くまた小さい。
モバイルモニター+モバイルバッテリー+UM790+キーボードで2kgほど。リュックであれば簡単に持ち運ぶことができる。
これを重いと思うかどうかは普段どう持ち運び、どう使うか次第だと言える。
CPUやGPUの性能については各種レビューを見てもらえればと思うが、期待していた1.2倍ぐらい高く、さらにはその性能の高さ以上に発熱の少なさが気に入っている。熱の出にくさはそのまま故障の少なさにつながるが、この点はミニPC環境の構築をもくろんでいた自分の狙い(故障を避ける)と合致していて大変うれしかった。
具体的には、BIOSで特にブーストさせることなく標準設定のまま動かしたところ、アイドル時は平均38度ほど。この辺はインテルに比べれば多少高めなのかもしれないが、驚いたのが中負荷時。試しにOBSで配信をしつつ動画を流し、さらに軽いゲームをやってみたが、使用率10%台でCPU温度は45度未満だった。高負荷のゲーム等をやらない限りは基本的に50度を超えない。ウィンドウアップデートが入って50度をようやく超える辺りと言えば通じやすいかも(すべて室内25-26度設定)。
もちろんメーカー側の調整がうまくいっているということもあるかもしれないが、同じくminisforumから出ているインテルcpuの筐体はサーマルスロットリングが働いて性能が落ちるという話が複数出ているので、根本的な部分でZen4省電力性の高さがこの低発熱高性能に寄与していると思われる。
- ノートPCからミニPCへと移行するメリット・デメリット
実際に一週間ほどノートPCの代わりにミニPCを使ってみてわかったことを、メリットとデメリットとしてまとめていく。
<メリット>
・CPUその他各部の温度が低い(だいたい30度台)
・上記のおかげで簡単に性能を発揮しやすい
・起動音が極めて静か。電源のLEDがついてないと電源がついてるかわからないぐらい。
・筐体が丈夫なのでノートより故障しにくい(はず)
・モニターもキーボードも好きなものを選べる
・うまくいけばノートPCより電源の持ちの良いモバイルバッテリーを使用できる
<デメリット>
・設置作業は当然ノートPCよりかかるし、機材が一つにまとまってないので忘れ物が出やすい
・地味にカメラ+マイクがついてないのがつらい
・ノートPCよりは重いことが多い
・直接バッテリーとつながっているわけではないのでケーブルが抜けてしまえば電源が落ちるリスクが常にある
・電車内などでラップトップとして使うことができない(タッチパネル式のモニターであればなんとかできるが作業が限られる)
総じて言えば、メリットは温度の低さとその高いカスタマイズ性、デメリットはノートが備えている機能で引き継げない分がそのまま出ているという感じだ。
故障のリスクとカスタマイズ性、温度や静音性等々を犠牲にして利便性を第一に考えたいのであれば、素直にノートPCを選ぶ方がよい。
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使ってみて新たに分かったこと
最後に、UM790 PROでいろいろな検証を通じて初めて分かった、このPCの特徴を列挙していく。
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結論
良い(が、持ち運びや即応性に欠けるという点が難点)。
上記のように、取り回しがノートPCと比べれば犠牲になってしまうが、それを補って余りある性能+低温+静音+丈夫さを求めるのであればあり。もともと私がそれを求めていたということもあるが……。
価格に関しては、PC筐体(11万弱)に加えて、モバイルバッテリー(15000前後)+モバイルモニター(15000前後)+ケーブル二本(高くて3000ぐらい)+キーボード(高くて1万ぐらい?)を用意すると、合計で15万強という予算感で、好きな製品を揃えられてこの性能というのは正直安いと思う。
私の買ったモバイルモニターは少しお高めだが、上に書いた各種機能を求めず、表示するだけに特化したモバイルモニターであればかなり価格を抑えられるはず。
ということで、
- ノートPCの耐久性に不満・不満がある人
- モニターやキーボードなどを単品レベルで見た場合、ノートでは欲しい機能や満足いく製品を揃えられないことに不満がある人
- ノートPCとは違う、少し変わった環境でモバイルPCを実現したい人
などにはかなりお勧めできる感じです。
長くなりましたが以上。
*1:
以下、注意してほしいのは、公式ではモバイルバッテリーでの動作を勧めていないという点。DCからの給電は120W弱あるのだが、USB4のポートからの給電は最大100Wなので、何らかの動作で局所的に消費電力が100Wを超えてしまうような場合にはPCが落ちる可能性があるのを承知の上で以下読んでくださいませ。ただ、そもそもTDPが35-54wと公式で示されているので、ssdや搭載ファンの消費電力を合わせても、よほどのことがない限り100wを超えるようなことはないはず。
*2:
以下余談。
実はLight Monitor 150BWの購入に先立って必要があったので、モバイルモニターとしてはド定番のInnoView シルバー(https://amzn.asia/d/g7xo2IH)を購入していた。こちらは価格的には15000円程度とリーズナブルな15.6インチモニターとなっている。むろんこれだけ安ければタッチパネル形式ではないのだが、それ以外の部分ではFHDのモニターとしてかなり標準的な性能となっていて使い勝手がいい。
上記の機能で言えば、電源のパススルー機能がついているので、モニター経由で電源をノートPCなどに供給することも可能だ。もともと自作で組んだPCの起動検証用にと購入したが、ノートPCで作業領域を増やしたい時などにときおり使用していた。
ただ、実は前者の自作PCの起動検証用として考える際に罠がある。実はDisplayport / HDMI INでUSB-C OUTのケーブルが実はあまりない。逆のUSB-CがINでDisplayport / HDMIがOUTの製品は世の中にたくさんある、というより特に表記がなければ普通はこっち。
ノートPCからモニターに接続するときに使うのが後者なのだが、自作PCだとGPUからの出力をモバイルモニターのUSB-Cで受けなければならず(だいたいミニHDMIがついてるのでそっちを使うと問題がないけど、こっちはこっちで変換コネクタ探すのに苦労する)、この需要を満たすケーブルを探すのに少し時間がかかった。
結局このIN / OUTの問題を解決してくれたのは、amazon basicのDisplayport - USB-C変換(https://amzn.asia/d/g7xo2IH)だった。
この商品のページタイトルをよく見ると「双方向」と書いてある。つまりこいつさえ買っておけば、PC側のDisplayportから出力された映像データを、USB-C経由でモバイルモニターに出力することが可能になるし、もちろん逆に、例えばスマホの映像をディスプレイに映すことも可能。
ただし、もちろんだけどこのケーブルからは給電をすることができないので、こちらでモバイルモニターを映す場合には別途給電もおこなう必要があり、映像出力用と給電用でUSB-Cポートが埋まってしまうので多少厄介だが、自作PCの起動確認用と考えれば問題はない。
余談終わり。